3年次春学期開講科目の「材料工学実験Ⅰ」の様子を少しだけご紹介します。この科目は、6つのテーマの実験から構成され、材料工学EPの講義や演習科目で学んだ知識を、実験で体験することにより、生きた形で定着させることを目的としています。また、データの取得、整理、解析、考察を行い、レポートやプレゼンテーションを通して他者に結果や自らの考えを伝えることにより、技術者としての能力の基盤を形成することを目指しています。



実験前の説明
【テーマ①: 物質中の分子数の評価】
物質量(mol)はSI基本単位のひとつであり、1 molを構成する粒子の数(アボガドロ数)を実感することは重要です。この実験では、種々の無機物質(ダイヤモンド、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム)の粉末を用いて、その数字の意味を確かめます。



実験器具の取扱いからレクチャー

比重びんを粉末や蒸留水で満たし、重量を測定します

【テーマ②: 熱分析と状態図】
純金属(亜鉛、アンチモン、アルミニウム)の冷却曲線を測定し、液相から固相へ変態する際の核生成過程を学びます。また、アルミニウムと銅の合金の冷却曲線を測定し、二元合金状態図の一部を作成します。そして、熱平衡状態図との違いを考察します。



電気炉を用いて金属の冷却曲線を測定します
【テーマ③: 熱処理組織の顕微観察】
金属材料は、熱処理により組織制御を行うことが可能で、また、組織により機械的性質が異なります。この実験では、熱処理条件を変化させた炭素鋼に対して、顕微観察を行うことにより組織を調べ、また、ビッカース硬さを調べることにより、組織と機械特性の関係を理解します。



試料を研磨し、ナイタール液を用いて腐食させます

光学顕微鏡を用いて試料を観察します

【テーマ④: 高温における金属の変形】
「鉄は熱いうちに打て」といわれるように、金属材料の変形挙動は温度により変化します。この実験では、変形挙動に及ぼす温度、歪速度、結晶粒径の影響を調べます。



熱処理を行いながら、材料を単軸圧縮させます
【テーマ⑤: 超伝導転移・熱電対の校正】
イットリウム系超伝導体(YBCO)を作製し、その超伝導現象を観測します。低温実験の手法を身につけるとともに、温度を測定するための熱電対の原理を理解し、その校正方法も学びます。



液体窒素を用いて試料を冷却し、超伝導特性を調べます
【テーマ⑥: 粘性および粘弾性】
私たちの身の周りには、固体と液体の特徴を併せ持つソフトマターと呼ばれる物質が存在し、その力学的特性である粘弾性を理解することは重要です。この実験では、ソフトマターの力学的特性の定量化手法を学びます。



スターラーを用いて試料を準備します

粘弾性を測定します