更新遅くなってすみません。今回は鈴木先生からのコラムとなります。(中尾)

ソフトマター/ソフトマテリアルという名称は、金属やセラミックスのような硬い物質に対比して使われ、プラスチック、ゴム(エラストマー)、高分子(ゲル)、液晶、エマルジョンなどで代表される柔らかい素材です。専門用語を使うと、柔軟構造を有し構成要素間の弱い相互作用と大きな熱的揺らぎによって特徴付けられる凝縮物質(固体、液体)の総称と言えます。ゼラチン、ペンキ、界面活性剤、液晶ディスプレイ、光電気感受性をもつ機能性高分子素材などの人工物のほか、たんぱく質やDNAなど生命の自然界でも多数見られます。

ソフトマターの中でも高分子ゲルは、高分子が架橋されて3次元の網目を作り、それが水などの液体を吸って膨潤したもので、高吸水性ポリマーとして広く活用されています。身の回りには、豆腐、こんにゃく、ゼリーなどの食品や、化粧品、紙オムツなどの日用品、シールド工法の止水材や免震ゴムなどの工業材料など、いたる所に使われています。

吸水性のゲルは、水を吸って膨みます。膨んだ状態は1つの相で、周りの環境に敏感に応答し、しばしば不連続かつ可逆的に体積が変化します。どうしたら速く、たくさんの水を吸えるかという問題は、ゲルの相とその変化を理解すれば解決します。また、スポンジやタオルも水を吸いますが、吸水量は多くても自重の10倍程度で、絞ったり押さえると水が出てきます。一方、ゲルでは自重の500倍もの水を吸いますが、押さえても水は出にくいという性質があります。これらの違いも、ゲルの網目構造を解明すれば理解できます。

ここでは、高分子ゲルのユニークな性質とその基礎を、簡単な物理や化学で分かりやすく紹介します。

このコラムからの課題

高分子ゲルが水を吸って膨潤するということは、高分子と水という2種類の成分がよく混ざるということす。これは、2種類の金属がよく混ざり合って合金ができるときと同じように考えられます。この2つの現象の共通点と相違点を考えましょう。